【ノスタルジックにぶらり旅】摂田屋・宮内 発酵のまちで時間旅行

長岡市の『摂田屋・宮内』は、古くから醸造文化で栄えてきた歴史あるエリアのひとつです。
旧三国街道に面しているこの一帯は、かつて旅商人たちの疲れを癒す宿場があったことから、『接待屋』が語源となり『摂田屋』に転じたという所説。
今回は、そんな旅商人にちなんで、ノスタルジックに散策できる4つのスポットを、地域密着クリエイター、インスタで大人気の三尺玉三郎さんが案内します。
竹駒神社
まずは旧三国街道沿い、『越のむらさき』近くにある竹駒神社で参拝してから、約1時間半のコースをスタート。
こちらは1889年(明治22年)に宮城県岩沼市の竹駒神社を勧請して創建されたもので、可愛らしいお狐さまは親子、五穀豊穣・商売繁盛・安産の神様として親しまれている神社です。
掲示板には2004年(平成16年)に発生した『新潟県中越地震』で胴体の一部が落下により損傷。
地殻変動で社殿が10cm前に移動したものの、倒壊は免れたという貴重な説明も見ることができます。
社殿から先に続く旧三国街道は、しょう油や米麹の香りが漂い、『吉乃川』の景観を眺める事ができる場所としても人気のエリアです。
道中には『至る江戸へ 至る長岡へ』と書かれた標識が立っていて、確かに旅商人たちが行き交っていたことを物語っています。
外から眺めていたら、『あっ!』
境内の隅っこに可愛らしいお狐さまが仲良く祀られていました!
パンと菓子 旭屋
お腹がすいては旅などできぬ! ということで、朝食を兼ねて一軒目に立ち寄ったお店がこちら。
竹駒神社から徒歩3分ほどにお店を構える創業大正元年の老舗ベーカリー『旭屋』にやってきました。
名物は、注文を受けてから中身をペーストしてくれる『コッペパン』。
もちもち生地に、お好み次第で自由自在な『あん』の組み合わせが人気です。
売れ筋はピーナッツ&マーガリンミックスとのことですが、ほかにも『チョコレート』や『きなこ』など食べ比べも楽しくて、どれも学校給食を思い出すような懐かしい味わいです。
『煮たまごパン』は『味付けたまご』を丸ごと包んだ、こちらもお店の看板メニュー。
香ばしい揚げパンからジュワっとこぼれる半熟加減は、素朴ながらにシンプル・イズ・ベスト!
煮たまごパンを求めて足を運ぶ常連さんも多く、時間によっては品出しが追いつかない場合もあるそうなので、見つけた時がお買い時!
お土産にも買っていきたい逸品です。
店内はコンパクトながら古き良き昭和感が漂い、老舗と言われる場所には、やっぱり人を惹きつける何かがあって、味だけではない人情や優しさが100年以上も愛されてきた理由なのだと、ご夫婦のお話に耳を傾けながらホッコリできるパン屋さん。
ちなみに、お会計の前にある『旧機サフラン酒製造本舗の鏝絵(こてえ)蔵』の写真は、偶然にも中越地震前日に、ご主人が撮影したものだそうで、当時の記憶を風化させないようにと今でも大切に飾られているとのことです。
星野本店
続いては摂田屋ならではのお土産を求めて星野本店にやってきました。
創業弘化3年(1846年)。江戸時代後期から続く越後味噌・醤油の醸造元で、平成8年には中澤信吉氏(前取締役工場長)が内閣総理大臣より黄綬褒章を受賞した名店です。
伝統と歴史を感じさせる店内には、自社ブランドの商品がずらりと並びます。
全国鑑評会、農林水産大臣官房長賞受賞の『味噌』や人気のセット『味比べ』、お料理も楽しい『糀一夜漬けの友』や愛用者も多い調味料など、なんとも発酵のまちならではのお買い物ができる品揃えです。
日本人ならお味噌汁!……だけでなく、実は『お味噌』は万能調味料。
比較的、どんな食材や料理にも合わせやすく、ご主人いわく『テーブル味噌』もおすすめなのだとか。
「小さな容器に入れておき、色々な食材に少しずつ付けて食べると味に深みが増したり、手軽に栄養も摂れて便利ですよ」と教えてくれました。
こんな雑学も学ぶことができて、付加価値の高いショッピングを楽しむことができますね。
そんなお話を聞いていた中で…皆さんは『3階蔵』ってご存知ですか?
なにやら敷地内に貴重な蔵があるとのことで、早速見学させてもらうことに。
衣装蔵として建てられたもので、室内はひんやり、昔ながらの重厚な造りが風情を感じさせます。
地域向けのオープンスペースや希望があればイベント会場にも使用させてもらえるとのことで、興味のある方はぜひ一度見学してみてくださいね。(見学については店頭にてお問い合わせください。)
ミヤウチショウガカレー研究所
まちを散策していると日頃の運動不足にもぴったり。そろそろお昼にも差し掛かり、お待ちかねのランチタイムへ。
美味しいお店やカフェが並ぶ中で、今回おじゃましてきたスポットがこちら。
JR宮内駅前(交差点)にある、元建築設計士のオーナーさんが経営するカレーライス専門店『ミヤウチショウガカレー研究所』。
さっぱりとした酸味がきいたスパイシーなスープカレーで、クリームが配合されていることで味に丸みが加わります。
福神漬けの代わりには刻みピクルスが添えられ、味も見た目もおしゃれなひと皿です。
美味しさはもちろんのこと、エキセントリックな店内もおすすめ。
昔懐かしい音楽CDやレコード盤などが並び、待ち時間やお食事中に見渡してみるのも楽しみ方のひとつです。
所長さん(ご店主)も気さくな方で、お話しすると、店内にある珍しいカラクリを教えてくれるかもしれません。
店内のBGMは、なんと〇〇から流れているのだとか。
こちらのお店はテイクアウトにも対応しており、専用の有料パックの他、ご自宅から鍋を持参すれば、容器代がお得になるコスパ術もGOOD!
何かと忙しい夕方だけに、こんなお店を知っておけば、夕食支度の時短にもなって、おうちシェフの強い味方にもなりますね。
そんなこんなでアッという間の散歩旅。
改めて散策してみると色々な発見があるもので、『摂田屋・宮内』は、歴史と今が自然体の中でバランスよく共存している町であり、ごく日常的な暮らしや風景などから伝統や文化を身近に感じる事ができる場所。
それは魅せる観光だけではなく、特別でないからこそ、訪れるたびに親しみやすく落ち着けるのかもしれません。
飾らない中にも、深い伝統や文化が継承されていて、それはまるで発酵みたいに、歴史が育んできた古き良き日本の味を楽しむ事ができるのです。
四季折々に自然な色が香るまち
みなさんも旅人の気分で訪れてみませんか『摂田屋・宮内』へ。