【はくはつ1号のサフラン酒本舗考察】旧機那サフラン酒製造本舗の庭園は「結界」の集まり
昭和6年に完成した摂田屋にある旧機那サフラン酒製造本舗の庭園には、ただ美しいだけではない、もうひとつの意味が隠されています。それは、大切な人を守るために張り巡らされた「結界」という考え方
石や池、建築の細部に込められた祈りをたどることで、庭園の新しい楽しみ方が見えてきます。
この見方を教えてくれたのは、普段サフラン酒本舗でボランティアガイドをされている市民の方です。
日本庭園に込められた「結界」という考え方
こんにちは、はくはつ1号です。
今回は、昭和6(1931)年に完成した庭園の、ちょっと変わった見方のお話です。
日本庭園の石や池は、美しい景観と精神的・宗教的な「結界(けっかい)」の二重の意味をもつといわれます。
後者の目的は、簡単に言えば、大切なものを災いから守ること。
この庭園がつくられた当時、商売を成功させた仁太郎さんにとって大切だったのは、
自身の成功への祈りと実現した感謝、そしてお世話になったお客様です。
庭園に張り巡らされた結界
庭園、そして奥にある離れ座敷は見どころ満載ですが、
この離れ座敷は、賓客をもてなす場として贅を尽くして建てられた空間でもあります。
その大切な客人を迎える場を守るように、庭園にはいくつもの結界が張り巡らされています。
どこにどんな結界があるのかを見ていくと、これまた新しい楽しみ方が生まれます。

図を見ると、庭園の中にいくつかの「境界」が重なっていることがわかります。
赤:外界を遮る結界 青:水と木でつくる境界 緑:茶の空間に見立てた結界
それぞれが屋敷全体を守るような構造になっています。
外界を遮る「築山」

溶岩でつくられた築山は、外からの影響を遮る“境界”としての役割を持っています。
ご神木のモミの木

庭園の東端にあるモミの木と、かつて中央にあったモミの木。
この配置によって、
空間にもうひとつの境界が生まれていたと考えられます。
離れ座敷の内側から見えてくる結界

離れ座敷のガラス窓の四隅には、「猪の目(いのめ)」と呼ばれる装飾が施されています。
ハート形にも見えるこのかたちは、古くから魔除けの意味を持つとされてきました。
さらに、建物の内側から庭園を見てみると、露地に見立てた踏み石や手水鉢(蹲)など、
茶の空間として設計された結界も見えてきます。
屋敷全体に散りばめられた守り
建物の屋根下には「懸魚(げぎょ)」や、魔除けの意味を持つとされる奇岩や細工が散りばめられています。
※懸魚とは屋根の破風に取りつけて、棟木や桁の木口を隠す装飾。


赤玉石は、通用門門柱の下、鏝絵蔵の角など、屋敷の至る所に設置されています。
まとめ
これらの結界は、お招きしたお客様を災いから守る鉄壁の構え、仁太郎さんの想いです。
何気なく歩くだけでは気づかない細部も、ひとつひとつ意味を知ることで、見え方が少し変わってきます。
次に訪れたときは、ぜひ「どこに結界があるか」を探しながら庭園を散策してみてください。
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